住宅地に突然現れる塔を備えた重厚な建物。
壁面にはオリーブやグリフォンのレリーフがあります。
国の登録有形文化財に指定されていて、独創的で美しい設計は「日本一の村役場」と称えられたそうです。
今では公民館になっていて、図書館の分署があるので、散歩のついでに本を借りたりと、よく訪れる場所です。
設計したのは建築家の村野藤吾さん。
広島市の世界平和祈念堂など多くの設計をされた方です。
階段の設計が特徴的で「階段の魔術師」と呼ばれているのだとか。
写真は父が見学ツアーのようなものに参加したときのものです。
写真の階段は普段、図書室を利用する際には目にしないので、今回記事を書くにあたって調べてみました。
曲線を多用したデザインが多いのですが、手すりにもこだわり、各階で曲がり方を変えたりと面白い設計になっています。
建築当時の主流は左右対称であったり、合理性を追求したモダニズム建築で、装飾を排除する傾向が強かったようですが、レリーフや階段、塔へのこだわりに、建築家の人格や思想が感じられます。
個性とは驚くような風貌ではなく、その人の持つ思想や生き方がにじみ出るものだと思います。
異彩を放つ建物でありながら、決して奇抜ではなく人々の生活になじんでいるところがとても素敵です。
1937年に立てられたこの旧村役場は、第二次世界大戦や阪神大震災など幾多の災厄を乗り越えています。
86年に改修された時にも外観タイルは建築当時のものを忠実に再現したようで、地域の人々に愛されているのを感じます。
お近くにお立ち寄りの際にはぜひ訪れてほしい場所です。